Shoyo について

1955年生まれ。早大法卒。翻訳者。エイティエル出版代表。 全長30フィートのヨットをオフィスにするため奮闘中。

今週の名言・迷言 38

人の性格を一番よく表しているのは、その人が自分に利益をもたらさない者をどう扱うかと、自分に反抗できない者をどう扱うかなのですよ。

アビゲイル・ヴァン・ビューレン

アビゲイル・ヴァン・ビューレン(1918年~2013年)は、アメリカのコラムニストで、「親愛なるアビー」で始まる、半世紀以上続く新聞の人生相談コーナーの名回答者として人気がありました。

同じく有名な人生相談のコラムニストにアン・ランダースがいますが、双子の姉妹です(どちらも筆名)。

アン・ランダースが先に人生相談コラムを連載し、その後にアビゲイルが「親愛なるアビー」のコラムを開始したのですが、事前に相談がなくパクられたということで、この姉妹は十年も続く大げんかをしてしまいました。

紙上で人生を論じ、生き方を説いていた回答者同士が、姉妹でありながら、口もきかない犬猿の仲になったわけで、それがスキャンダルとして大きく雑誌などで取り上げられました。

が、皮肉なことに、そのおかげで二人のコラムは全米中に知れ渡り、新聞で大人気の名物コーナーになっていったのです。

悪名(あくみょう)は無名(むめい)に勝る(There is no such thing as bad publicity)を地でいく話で、昨今のSNSの炎上商法も、検索ワードで上位に来れば広告収入が増すわけですから、それもうなづけます。

ところで、アビゲイル・ヴァン・ビューレンはすでに亡くなっていますが、「親愛なるアビー」ではじまる人生相談コーナーは現在も続いています。

本人が晩年にアルツハイマー病になってからは、娘が母親の名前を引き継いで回答を続けているようです。

歌舞伎や落語など日本の伝統芸能では「名跡の襲名」はごく一般的に行われていますし、サザエさんの作者の死後も新作アニメが毎週放送されているようなものでしょうか。

今週の名言・迷言 37

幸福の扉の一つが閉ざされたときには、別の扉が開くものです。でも、私たちは閉じた扉をずっと見つめているので、開かれた扉のことは目に入らないのです。

ヘレン・ケラー

ヘレン・ケラー(1880年~1968年)は、幼児のころにかかった髄膜炎の後遺症で目と耳に重度の障害を持ち、甘やかされて育てられました。

両親の依頼で盲学校から派遣されたアン・サリヴァン先生(当時20歳!)と出会ったことで、女子の高等教育(ラドクリフ・カレッジ。1999年にハーバード大学と合併)を受けるまでになり、障害者の教育や福祉に力をそそいだことで知られています。

三度も来日し、映画などで「奇跡の人」として知られていますが、この奇跡の人(The Miracle Worker” は、本来はヘレン・ケラーではなく、ヘレン・ケラーを導いたサリヴァン先生のことを指すのだそうです。

ちなみに、今年の平昌オリンピックの後、ロシアのフィギュアスケートのザギトワ選手に秋田犬が送られましたが、一世紀ほど前に来日したヘレン・ケラーに対しても、彼女の希望を受けて秋田犬が送られています。

今週の名言・迷言 36

私たちは人生を二度味わうために書くのです。一度目はその瞬間に、そして二度目は思い出として。

アナイス・ニン

アナイス・ニン(1903年~1977年)はフランスの作家。両親は欧州系キューバ人です。

十一歳から死の直前まで六十年以上にわたって日記を書き続けたことでも知られています。

より正確には、両親が離婚したため、父親に近況を伝える手紙という形で書き始めたものの、書くこと自体が心の支えになっていったということのようです。

生存中に公刊された日記には、パリでの銀行家の夫との結婚生活中に『北回帰線』などの作品で知られるアメリカの作家ヘンリー・ミラーと不倫関係にあったことが書かれていたことでも話題になりました(死後、『ヘンリー&ジューン』で映画化されています)。

彼女の無修正の日記は本人と最初の夫の死亡後、重婚状態にあった二度目の夫によって出版されました。

今週の名言・迷言 35

自分をいつわって愛されるより、本当の自分をさらけだして嫌われるほうがましだ。

アンドレ・ジッド

アンドレ・ジッド(1869年~1951年)は『狭き門』『法王庁の抜け穴』『贋金づくり』などの作品で知られるフランスのノーベル賞作家。

「自分をいつわって愛されるより」という言葉は、SNSでリア充を競い合っている現代にも通じるような……

ジッドは従姉と結婚し、『狭き門』や『田園交響楽』には彼女を思わせる人物も登場しますが、ジッド自身は同性愛者で、そのことも公言していました。

死後、彼の作品はローマ法王庁(=ローマ教皇庁)から禁書扱いにされますが、そういうことを踏まえると、この言葉には人生をかけた重みが感じられます。

今週の名言・迷言 34

真に幸福になるには、人は一日に五回、死について考えなければならない

ブータンの言い伝え

ブータンといえば数年前に国民の幸福度が世界一高い国として注目され、国王夫妻が来日して話題にもなりました。

国民総幸福量という概念は半世紀ほど前にブータン国で提唱され、それが国の政策にいかされているそうです。

先進国の現状を見ると、経済が成長し所得が増大することで幸福になれるのか疑問だ、それに比べて、国民所得の低いブータンでは国民の97%が自分は幸福だと感じている、という非常にわかりやすい比較で、当時はちょっとしたブームになりました。

この97%という数字自体は統計調査の設問に問題があるという指摘がなされていて、若い人の失業率も高く、現実の幸福度はそれほど高くないという説もありますが、「経済成長」や「お金」だけがすべてではないということ自体は広く共感を呼んでいるようです。

というわけで、なんと、それをもとにしたスマホのアプリもあります。

「忘れるな、君はいずれ死ぬということを」

英語では “Don’t forget, you’re going to die.”ですが、WeCroakというアプリは、この短いメッセージだけを一日五回送ってきます(実際の死と同じように時間は決まっていない)。有料なのに、ダウンロードしている人も少なくありません。

ちょっとイラッとする、目にしたくもないメッセージだし、朝出がけに送られてきたら頭にきそうですが、人生を無駄にすごしたくない、緊張感をもって集中して仕事や生活ができると、アメリカでは意外に評判もよく、ニューヨークタイムズなどでも取り上げられています(iOS版の評価では4.2、アンドロイド版では3.5)。

今週の名言・迷言 33

ぼくは、すべてのものについて、それが誤りであると証明されるまでは信じることにしている。だから、妖精や神話やドラゴンも信じてるんだ。心のなかだけであったとしても、そういうものはすべて存在しているんだよ。

ジョン・レノン

ジョン・レノン(1940年~1980年)は、イギリスのロックバンド、ザ・ビートルズの中心メンバーで、バンドの曲のほとんどはポール・マッカートニーとジョン・レノンが作詞・作曲を担当していましたが、両雄並び立たずで、レコードデビューからほぼ八年に事実上解散し、その後はそれぞれソロ活動や独自のバンド活動を展開しました。

ビートルズは二十世紀のポップミュージックを代表するロックバンドであり、メンバーそれぞれもすぐれたミュージシャンでした。

ジョン・レノンは一時期音楽活動を停止していましたが、再開後まもなくの1980年12月8日、ファンだと公言する男に自宅前で射殺されました。「ジョン・レノンが射殺された “John Lennon was shot to death.” というニュースはまたたくまに世界中に伝えられましたが、なぜ殺害にいたったのか、その理由はいまだに謎のままです。

今週の名言・迷言 32

私は道を見つける。なければ作るまでだ。

ラテン語の格言

語源というか、その由来は、紀元前三世紀~二世紀(日本でいえば弥生時代)に活躍したカルタゴの将軍ハンニバルにまでさかのぼると言われています。
カルタゴは地中海に面した当時の北アフリカの強国で、イベリア半島(現在のスペイン)まで勢力を広げ、ローマを相手に地中海を中心とした世界の覇権を争っていました。

象の部隊を含めた軍隊を率いてローマに進行するため、イベリア半島からピレネー山脈をこえ、さらにアルプスをこえてイタリアへ進軍するときに、ハンニバル将軍が言ったセリフと伝えられています。

2018年のアジア大会で優勝しワールドカップ出場を決めたなでしこジャパンの高倉麻子監督の座右の銘がこの言葉で、ラテン語で刻んだ指輪をされているそうです。

ちなみにラテン語では
Aut inveniam viam aut faciam
英語では
I shall either find a way or make one.
となります。

今週の名言・迷言 31

成功はゴールではなく、失敗ですべてが終わるわけでもない。それを続けることが勇気なのだ。

ウインストン・チャーチル

ウインストン・チャーチル(1874年~1965年)は第二次世界大戦時の英国首相。

戦後、いったん下野したものの、1951年に首相に返り咲きました。
若いころから著作も多く、ノーベル文学賞を受賞した作家でもあります。

英国貴族で政治家の父とアメリカの富豪の娘を母に持ち、学校時代は勉強嫌いで成績も悪く、いわゆる問題児だったようです。
南アフリカ共和国をめぐるボーア戦争に新聞社の特派員として派遣され、捕虜になったものの収容所を脱走したことで知名度を上げ、26歳で国会議員(庶民院議員)に当選し、政治家への道を歩みます。

「成功とは、失敗を繰り返しながらも、その間ずっと情熱を失わないことだ」とも述べています。

数多くの浮き沈みを経験しているので、説得力がありますね。

二度目の首相在任中の1953年に、回顧録『第二次世界大戦』*1でノーベル文学賞を受賞しましたが、この年はヘミングウェイが有力候補とされていました(翌年に受賞)。

*1: “The Second World War” (1948年~54年にかけて六分冊で出版。現在入手可能な邦訳には、2001年の河出文庫版があります。新装版、全4巻)。

今週の名言・迷言 30

日本の川を行くのは哀(かな)しい。それは失われたものへの挽歌を聴く旅だ。

野田知佑

野田知佑(1938年~)はカヌーイストで作家。日本にカヌーやカヤックによる旅というものを根づかせた第一人者。

有名無名を問わずカヌーイストを自称する人は多いが、その系譜をたどっていくと、結局はこの人に行き着く。

高度経済成長の果てにバブル経済が膨張しつつあった一九八〇年代前半、日本の河川は荒廃し、訪れた川の流域の住民から「昔はもっときれいだった」という声ばかりを聞かされたのが、この言葉の背景にある。

アユが遡上する現在の様子からは想像できないが、かつては多摩川も下流域が洗剤の白い泡で埋めつくされるほどだった。

今週の名言・迷言 29

宇宙に異星人はごく普通に存在していると思う。知的生命体はずっと少ないだろうがね。地球にはまだ出現していないという人もいる。

スティーヴン・ホーキング

今年(2018年)3月14日に76歳で亡くなった物理学者スティーヴン・ホーキングの言葉です。

学生時代に筋委縮性側索硬化症(ALS)を発症し、以後、車いすでの生活を余儀なくされながら、ブラックホールなどの研究と一般への啓蒙活動を精力的に続けたことでも知られています。

この言葉は、人間はまだ「知的」と呼べる生命体ではないという博士一流のジョークで、昨今の国内外のニュースを見ていると「たしかにそうだ」と思わせるものがありますが、博士は「我々はごく平均的な恒星を周回している小さな惑星の一つに生きている進化した種の猿にすぎない」とも述べています。

その後に「だが、我々は宇宙を理解できるし、これが我々を特別な存在にしている」と続きます。