世界一わかりやすい(?)天測航法4

2-2 北極星緯度法

天候によっては正午に太陽を観測できるとは限らない。
緯度を知る有力なバックアップ手段として北極星がある。
北極星は、ひしゃくの形をした北斗七星やWの形をしたカシオペア座を使った見つけ方を含めて、最もよく知られている星の一つだ。

地軸を北極の先まで伸ばした延長線上にあるため、つねに方角の北を指すが、それだけではなく、北半球では、北極星の水平線からの高さで、その場所の緯度がわかる。

次の図は、北極星の高度と緯度の関係を示している。
図2-1
f-2-1
Pは観察者のいる場所、ℓ は緯度、aは北極星の水平線からの高さを示している。

その一部を拡大する、こうなる。
図2-2
f-2-2

三角形OPXは直角三角形で∠xは直角なので、
ℓ+●=90度 (1)
∠hPz=a+●=90度 (2)
よって ℓ =a

つまり、北極星の高度aは緯度 ℓ に等しい。

しかし、正確には北極星は地軸の延長線上から少し離れたところにあるため、その分の補正が必要になる。

[北極星の高さから緯度を求める手順]

1.北極星の水平線からの高さを測定する(観測値)
2.太陽の場合と同じように高さの観測値を補正して真高度を得る
3.地方時角(L.H.A.)を求める
4.天測暦の北極星緯度表から時角に基づく補正値を見つけ、真高度を補正する(=緯度)

以下、具体的に説明する。

1.太陽と北極星の観察で一番違うところは、北極星は昼間は見えないという点だ。夜になると、星は見えるが、今度は水平線が見えなくなってしまう。
というわけで、夜明けか夕方に観測するしかない。
この手順では、揺れる船上で小さな星を六分儀で視界にとらえるのが一番むずかしい。そこさえクリアできれば、後は単純な計算になる。

2.観測高度を真高度にするには、太陽の場合と同じように高度改正を行う。
太陽は地球から近くて見かけの大きさがあるので、高度改正では視半径や視差による調整を行ったが、星(恒星)の場合は距離が遠く、ほぼ点とみなしてよいので、六分儀の器差(インデックスエラー)と眼高差、それに気温と水温の差のデータがあれば、それを使って補正する。
天測計算表には「星の測高度改正表」が掲載されているので、そこから必要な数値を拾って改正する。

図2-3 星の測高度改正表
star-height-correction
出典:『天測計算表』(書誌第601号)海上保安庁

観測高度から真高度を求めるには

(1) 器差(インデックスエラー)を改正する
(2) 第1改正 眼高と測高度による改正
(3) 第2改正(惑星の視差の改正なので、北極星では不要)
(4) 第3改正 気温と水温の差で、水温が高ければ表の値を足す。低ければ引く。

これで真高度が出る。

3.地方時角 (L.H.A.)とは、観測した場所の時間がグリニッジ標準時(世界標準時)とどれくらいずれているかを示すもので、要するに、海外旅行でよくいう時差と考えればよい(例の経度15度=1時間という考え方)。

天測暦には「北極星緯度表」が四ページにわたって記載されている。
これはグリニッジ標準時の場所に基づき、それと実際に観察した地点との差を一覧表にしたもの。

まず自分のいる場所とグリニッジ標準時(世界標準時)との時間差(これを「地方時角」という)を確認し、それに基づいて表で改正値を求めることになる。

地方時角(L.H.A.)の計算については「経度を知る」の項で詳しく説明する。
ちなみに日本の標準時となっている明石(東経135度)の地方時角は9時間(9h)である。
地方時角がわかったという前提で話を進める。

図2-4 北極星緯度表
polar-latitude-table
出典:『天文航法』(海文堂)添付の「(平成某年)天測暦抜粋」から
天測暦は毎年刊行され年ごとに数値が異なる。実際の天測暦には年が記載されている。

左ページが第1表、右ページの上が第2表、下が第3表。
それぞれ横軸を1時間ごと、縦軸は分ごとに整理してあるので、時角の時間(縦)と分(横)の交わるところの数値が目指す値になる。
これを真高度に加減して緯度を出す。第1表だけプラスとマイナスの値があるので、符号通りに足すか引く。第2表と第3表の値はつねに加算する

緯度の計算

緯度(ℓ)=北極星の真高度+第1表の値+第2表の値+第3表の値

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