スナーク号の航海 (4) ジャック・ロンドン著

スナーク号の航海にはもう一つの側面もある。ぼくは生きているうちに世界を見てみたいし、一つの小さな町や村より大きな世界を見ておくべきだろう。ぼくらはどんな航海にするかほとんど何も決めていなかった。絶対なのは一つだけで、それは最初の寄港地をホノルルにするということだ。一般的なプランはいくつかあったが、ハワイの次の寄港地については何も考えていなかった。近づいたら決めようって感じだ。要するに、南の海、つまりサモアとかニュージーランド、タスマニア、オーストラリア、ニューギニア、ボルネオ、スマトラなんかを巡って、フィリピン経由で日本まで北上する。それから韓国、中国、インド、紅海、地中海。その後の航海はばくぜんとしていて説明できないが、やりたいことはたくさんあって、ヨーロッパでは国ごとに一カ月から数カ月過ごそうと思っている。

スナーク号は帆走させるよ。ガソリンエンジンは搭載するが、潮流が速いところで風が急にやんだとか、暗礁や浅瀬みたいな危険な海域での緊急用だな。スナーク号の艤装はいわゆる「ケッチ」だ。ケッチはヨールとスクーナーを足して二で割ったようなやつだ。最近はヨール型がクルージングには最高だと証明されている。ケッチはヨール型のクルージングの長所を持っているし、それに加えて、スクーナーの帆走の長所もなんとか取り入れている。こういったことは割り引いて考えなければならない。全部、ぼくの頭で考えたことだからね。ぼくはこれまでケッチで帆走したこともないし、見たことすらない。この理論は、ぼくにはいいと思えるってことだ。海に出るまで待ってくれれば、ケッチでのクルージングと帆走についてもっと話ができるようになると思うよ。

当初の計画では、スナーク号の長さは水船長で四十フィート(約十二メートル)だった。だが、それでは浴室のスペースがとれないので、四十五フィート(約十三・五メートル)にしたのだ。最大幅は十五フィート(約五メートル)。ドッグハウスもホールドもない。船室の高さは六フィート(約一・八メートル)で、デッキは二つのコンパニオンウェイとハッチ一個を別にすれば連続している。デッキの強度を損なうドッグハウスがないという事実は、外洋で何トンもの海水が音を立てて船上にたたきつけることを思えば、気が少しは安まるんじゃないか。大きくて広々としたコクピットはデッキより低い位置にあり、高い手すりで囲まれ、自動的に排水されるようになっているので、昼夜を問わず荒天が続いても快適だろう。

クルーはいない予定だ。というか、むしろチャーミアンとロスコーとぼくがクルーだ。ぼくらは全部自分たちでやるつもりだ。自分の手で地球をぐるっと一周してやろうと思っている。帆走させるにせよ沈没させるにせよ、自分たちでやってみようというわけだ。むろん、コックと給仕係は雇うことになる。火を使って料理したり皿を洗ったりテーブルを整えたりするのはごめんだね。そんなことがしたいんだったら、陸にいたっていいわけだから。それに、ぼくらは見張りにも立たなけりゃならないし操船もしなきゃならない。おまけに、ぼくは食うために、新しい帆や艤装品を買うために、さらにスナーク号が効率よく動いてくれるように整備が欠かせないので、資金稼ぎに原稿も書かなきゃならない。おまけに牧場もある。ブドウ園、果樹園、生垣も育てていかなければならない。

浴室を確保するためスナーク号の全長を長くしたとき、浴室だけでそれだけのスペースは必要ないとわかった。それでエンジンを大きくした。七十馬力だ。これで九ノットで進めるだろうと期待できるので、流れが速くて手に負えないところはないんじゃないかな。

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[写真:スナーク号の建造の様子]

訳注
ヨットの船型について
 ヨール、ケッチ、スクーナーはいずれの比較的小型の二本マストのヨットの艤装(スクーナーは三本の場合もある)。
 ヨールとケッチは後ろのマスト(ミズンマスト)が低く、スクーナーは前のマストが低い。ヨールとケッチは形が似ているが、ミズンマストの位置が舵軸の前にある(ケッチ)か、後(船尾)にある(ヨール)かで区別する。
 ちなみに、小型ヨットで初めて世界一周したジョシュア・スローカムのスプレー号(全長三十七フィート)は出港時は一本マストのスループだったが、航海の途中でミズンマストを船尾に追加してヨール型に改造された。

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