立ち読み:英和対訳 クリスマス・キャロル

 

Christmas Carol

クリスマス・キャロル

Charles Dickens

チャールズ・ディケンズ著(うみへん編訳)

はじめに

『クリスマス・キャロル』は、経済的に成功した吝嗇どけち自己じこ中心的ちゅうな商人(貸金業)である老人が、クリスマスの時期に三人の過去・現在・未来の精霊と出会うことで改心するという、イギリスの国民的作家チャールズ・ディケンズの、あまりにも有名な作品です。

 逆に、有名な割にちゃんと読んだ人はそれほど多くない気もします――こういうことは、古典とか名作と呼ばれる作品にはよくある話ではあるのですが…… コスパやタイパ重視で、有名どころの本の内容を簡潔かんけつに説明したガイドブックやネット・書評サイトであらすじを読んでわかったような気になるのと、実際にその本を手にとってじっくり読んでみるのとでは、まったく異なる印象を受けることがあります。

 テレビで野球やサッカーを見て楽しんでいた人が、実際に自分でやってみると、キャッチボールひとつ、リフティングひとつとっても、意外にむずかしかったり、奥の深さを感じさせられたりしますよね。少なくとも、一つ一つのプレーに対する理解度が違ってきます。 それと同じで、長い年月を経て生き残っている作品には、単にコスパやタイパといった効率重視で片づけられない(それだけではつかみきれない)価値や、人の心をつかんではなさない興味深いものがある──わけです。  

 SNSの動画でひたいに汗して(表現が古い?)働かなくても、割と手軽にお金儲けができる時代になって、まわりにもアフィリエイトだ、動画の収益化だと(要するに、かねカネマネーと目の色が変わっていく人が多くなったような(?)気のするこの時代、こういう本を読み返してみるのも興味深いのではないでしょうか。

 もちろん、スクルージの元の生き方がビジネスの王道であって、おなみだ頂戴ちょうだい式のセンチメンタルな人情を真に受けていては経済が破綻はたんするとか、いろんな見方ができると思います。

 そういう議論や解釈がありうるところが名作の名作たるゆえんでもあります。

 とはいえ、本書が出版された一八四三年は、日本で言えば老中・水野忠邦みずのただくに天保てんぽう改革かいかくが行われていたころで、そのわずか十年後にはペリーが浦賀に黒船で来航し、幕末から明治維新へと続く動乱、歴史の大転換がなされる、そういう時代です。

 そういうときに、亡霊と一緒に空を飛び、過去と未来を行ったり来たりし、また瞬時に場所や時代が一変したりと、まあ、アニメで大人気の異世界転生ものの魔法や魔術のようでもありますが、こういうものをそういう時代に書いたというだけでも「ディケンズ先生、おそるべし」と言いたくなる、そういう本です。

この本の使い方

 英和対訳というからには英語の勉強の本と思われるでしょう。

 もちろん、そういう要素もあります。とはいえ、英語の本を(楽しみとして)読むことと、学校で習う英文解釈や英文和訳とは少し違います。

 また、英文和訳と翻訳との違いについても理解してほしいのですが、ここでは、なによりも、英文の意味を理解した上で、 「英文の朗読を聞きながら英語の本を読む」 という、”視覚や聴覚といった五感をフルに活用し、体全体で英語を感じる、まったく新しい読書体験” をしてみませんか? というお誘いでもあるのです。

 具体的な話をしましょう。次の英文を読んでみてください。

Father knew Mr. Jackson, who run the troupe, and convinced Mother that it would be a good start for me to make a career on the stage and the same time help her economically:

  • troupe = (劇団などの)一座、(to) convince = 確信させる、納得させる、economically = 経済的に

 この文は、映画草創期の喜劇王チャップリンの自伝の一節(第三章の冒頭)です。
“My Autobiography”、Charles Chaplin著、1964年 (ペンギン・モダン・クラシックス、2003年版より)

 英語の構文としてはシンプルで、父親がジャクソンさんを知っていて、母親に that 以下のことを納得させたという内容で、舞台人としてのチャップリンのキャリアが始まる場面です。  英文学者で東大教授だった中野好夫の訳を見てみましょう。

父は座長のジャクソンさんと知り合いだったので、わたしが役者になるにはもってこいのスタートだし、おまけに経済的にも助けになるだろうから、と母を説得した。

『チャップリン自伝 若き日々』(中野好夫訳)

 歯切れのよい言葉で、リズムもよく、明快で、わかりやすいですね。達意の名訳です。

 ですが、これが学校の英文和訳の試験であれば、受験英語指導のベテランの先生による多少の減点は避けられません。

 なぜか?

 試験の英文和訳は、英文の構文を文法に基づいて正確に分析し、使われている単語やフレーズの意味もわかっているということを採点者に過不足なく伝えることで高得点が得られるという仕組みになっているからです。

 つまり、できるだけ原文に忠実な直訳が(日本語としてぎこちなくても)高く評価されます。

 中野訳では 「一座を運営している」が「座長」に、「舞台でのキャリアを作る」が「役者になる」に、「同時に」が「おまけに」と訳されており、いわゆる意訳として、採点基準のグレーゾーンとみなされかねないわけです。

 一方、読者の立場からすると、いわゆる翻訳調のぎこちない日本語で読まされるのは勘弁してほしいので、その意味では、中野訳のように自然な日本語で伝えてもらう方がはるかに好ましいわけです。つまり、正確に解釈した上で、日本語として不自然ではない表現にブラッシュアップしてほしいわけです。

 もう少し、わかりやすい例をあげましょう。

I love you.

 これを「私はあなたを愛しています」と訳せれば試験では満点。

 ですが、翻訳としては???となることがあります。 その台詞せりふを言った主人公が女子高生だったらどうでしょう? 「私」とか「あなた」は省略して、ただ「好き」かもしれませんよね。若い男性だったら「愛してる」かもしれないし、状況設定によっては「結婚してくれ」の方が適切かもしれません。昔の年配の女性であれば「おしたい申し上げております」とか、ね。

 英国留学経験があり東京帝国大学の英文学教授(つまり、当時の英語の最高権威の一人)だった夏目漱石は 月がきれいですね と訳したそうです*。

*ちなみに、これは知る人ぞ知る有名な都市伝説です。漱石ならいかにもありそうと思わせるところがミソです。漱石全集に該当する文はないようだし、とはいえ、漱石は四国の旧制松山中学や熊本の第五高等学校でも教鞭きょうべんをとっていたので、授業で述べた可能性もあります。つまり、証明できないがゆえに都市伝説となっているわけです。興味のある人、解明してみませんか?

 試験英語であれば、漱石訳は文句なく落第です。 が、翻訳としては、どういう人が、どういう相手に、どういう状況で言ったのかによって、評価できたり評価できなかったりもします。つまり、翻訳は英文の解釈を正確に行った上で、誰が、いつ、どういう場面で、どういう風に言ったのかによって違ってくるので、全体に対する理解が必要なのです。 早い話が一人称の “I” だって、私もあれば僕や俺もあるし、わし、あたし、あちき、拙者、おいどん、吾輩と、人格や年齢、時代設定がわからなければ判断できなかったりします。

 要するに、英文解釈を土台として、その上にあるのが英文和訳で、翻訳ではさらにもうひと手間必要ということになります。 中野訳は新潮文庫におさめられていますが、同じ新潮文庫から中里京子さんの新訳が出ています。こんな感じ

父は「エイト・ランカシャー・ラッズ」の座長ジャクソンさんと顔なじみで、わたしがこの一座に加われば、役者になるための願ってもないスタートが切れるだけでなく、家計の足しにもなると母に説いた。

『チャップリン自伝 若き日々』(中里京子訳)新潮文庫、2017年

原文にない一座名(前章に出てきます)も加えられ、中野訳よりもう一歩、読者に寄り添った形になっていますね。

 本書『英和対訳 クリスマス・キャロル』についていえば、ここで示されている訳文は、皆さんの参考になるように翻訳の一歩手前の英文和訳レベルになっています。それを自分ならどう訳出するかということを考えながら読んでいくのもおもしろいかもしれません。

 個人的には、スクルージはケチで自己じこ自己じこ中心的ちゅうな金貸しなので、全編を『ナニワ金融道』風に関西弁で訳出したらおもしろい味が出るのではと思っていますが、どうでしょうか?

 関西弁が気にさわる人は、別の地域の「~弁」に置き換えてください。

 最後に、英語のネイティブがどういう風に英書を読んでいるかについて触れておきます。  英文解釈では、関係代名詞や関係副詞があれば前に戻って訳したりしますよね。漢文の返り点みたいに。

 でも、本をまるごと一冊読むときは、前から後へそのまま(戻らずに)読んでいきます。さきほどのチャップリンの英文でいうと、こんな感じ。

父は知っていた、ジャクソン氏を。で、その人はどういう人かっていうと、一座を運営していたわけか。で、父は次のようなことを母に納得させた。何を? 私がそうするのがよいことだって言ったのか、舞台でキャリアを積むってことが。同時に、彼女を経済的に助けることになる、と。そう言って納得させた。

 こういう風に頭から文の区切りごとに解釈していっても、だいたいの意味はつかめますよね。これが本を読むときの頭の中の様子です。朗読*を耳で聞くときも同じです。関係詞や接続詞で後戻りしていたら、ぜったいに追いつけません。

かんあたわず」って言葉がありますよね。おもしろくて夢中でページをくる感じ。 そういうときって知らない言葉があっても、いちいち辞書を引いたりしませんよね。ほめてるのか、けなしてるのか、激しいのか、おだやかなのか、そういったことの見当がつけば、大丈夫──そうやって読み進めているうちに、ああ、あれはこういう意味だったのかって後でわかってきたりしますから。 全部を知ろうとしない、知らない言葉があっても気にしない、前後の文脈でだいたいの見当がつけばいいや、という姿勢が大事です。  この本を手にする人は日本語のネイティブだと思いますが、日本語で小説や新聞を読むときも、そうではないですか? 知らない言葉とか出てきても、辞書は引かず、そのまま読んでしまいますよね。それでもなんとなくわかります。

  まあ、そこで立ち止まって意味を調べないと気が済まないという人もいるでしょうが、よく使われる重要な言葉なら何度も出てきますし、前後の文脈から見当がついたりするものです。知らない単語が出てきてもあまり気にならないという状態になれば、英語が上達した証(あかし)といえます。

 それでは、この不思議な、しかも思わず自分を振り返りたくなるような物語の世界に入っていくことにしましょう。すべてをわからなければダメという意識を捨てて、英文の流れに身をまかせましょう。

*本書の英文については、出版社のサイトに英語の朗読ファイルが用意されています。サイト上で聞いたり、mp3ファイルをダウンロードすることができます(無料)。 あとがきにURLとQRコードが記載してあります。

目 次

はじめに
この本の使い方
STEVE I 第一章 マーレイの幽霊
STAVE II. 第二章 第一の精霊
STAVE III. 第三章 第二の精霊
STAVE IV. 第四章 第三の精霊
STAVE V. 第五章 エピローグ
あとがき

STEVE I 第一章 マーレイの幽霊

Marley’s Ghost マーレイの幽霊

※本書『クリスマス・キャロル』は ・プロローグ ・三人の精霊との時空を超えた過去・現在・未来という三つの旅 ・エピローグ の五部構成になっていて、それぞれ “Stave I~5” の番号がつけられています。 *stave = 木の棒や細い板 板を組み合わせてたるおけが作られるように、文学では詩の「あるまとまり」を指す「節」や「連」のことです。この作品は物語なので、ここでは「章」としておきましょう。

Marley was dead: to begin with.
まず初めに、マーレイは死んでいた。

There is no doubt whatever about that.
それについては、まったく疑いがない。

The register of his burial was signed by the clergyman, the clerk, the undertaker, and the chief mourner.
彼の埋葬登録書には、牧師や記録係、葬儀屋、それに喪主も署名していた。

*register = (名詞として)登録された記録、burial = 埋葬、clergyman = 聖職者、client = 事務員、担当者、undertaker = 葬儀屋、mourner = 哀悼する人、会葬者

Scrooge signed it; and Scrooge’s name was good upon ‘change, for anything he chose to put his hand to. スクルージは(喪主として)それに署名した。しかも、スクルージという名前は、彼が署名しようと選択するいかなる文書に対しても有効であった。

*’change = exchange = 交換、stock of exchange = 証券取引、good upon ’change = 本物、正式(信用があるという意味)

Old Marley was as dead as a door-nail.
マーレイ老人はドアの釘のように(完全に)死んでいた。

*door-nail = ドアの釘(生命のないものの象徴として使用されている)

Mind! I don’t mean to say that I know, of my own knowledge, what there is particularly dead about a door-nail.
注意していただきたい! 私は、自分の知識に基づき、ドアの釘の特に何が死んでいるのか知っていると言うつもりはない。

I might have been inclined, myself, to regard a coffin-nail as the deadest piece of Ironmongery in the trade.
私としては、棺桶かんおけを打ちつける釘こそが取引における(この世界における)最も死んだ金物だと見なしたい。

*be inclined to … = …したい、coffin = 棺桶かんおけ、ironmongery = 金物類

But the wisdom of our ancestors is in the simile; and my unhallowed hands shall not disturb it, or the country’s done for.
だが、われわれの先祖の知恵は直喩ちょくゆにあるのだし、私の不浄な手でそれをかき乱すべきではない。でないと、この国は破滅してしまう。

*wisdom = 知恵、死ぬ、simile = 直喩ちょくゆ、unhallowed = 不浄の、(to) disturb = 乱す、be done for … = 破滅した

※ドアの釘とは、木製の扉のノッカーでたたく金属やプレートのことで、先祖の知恵とは、しょっちゅうたたかれているので死んだものの象徴として従来から使用されていることを指します。 この物語の語り手としては「棺桶かんおけの釘」という言葉を使いたいが、古くからの言い回しに従ってドアの釘とした、という趣旨です。 まあ、こうした説明を加えていくと、本文より注釈の方がずっと長くなってしまうので、これ以降については、現代の若い読者にはなじみのない語句の訳語を中心に示すにとどめます。 また、ここで示す訳文は英文解釈の参考程度で、翻訳の前段階とお考えください。 一人称の “I” ひとつとっても「私」や「俺」や「拙者」、「吾輩」と訳語は数多くあり、そのどれを選ぶかで作品のトーンというか雰囲気が違ってきます。 前述したように、守銭奴しゅせんどの話なので全編を関西弁で訳したら面白いかもと思っていますが、皆さんもそういうことを考えながら読み進めると、面白さが増すかもしれません。

You will therefore permit me to repeat, emphatically, that Marley was as dead as a door-nail.
したがって、君たちは、私が、マーレイはドアの釘のように(完全に)死んでいるとはっきり繰り返すのを許してくれるだろう。

*therefore = したがって、(to) permit = 許す、emphatically = 強調して

Scrooge knew he was dead?
スクルージは彼が死んだことを知っていたのか?

※この作品に限りませんが、ディケンズの英文には、学校の英語の先生なら赤ペンを入れたくなる文章が頻発します(本来なら “Did Scrooge know he was dead?”)。 コロン “:” やセミコロン “;” 、ダッシュ “-” も多用しています。 それは短い文を畳(たた)みかけることにより生き生きとした独特のリズムを作りだすためでもあるので、読む側としては、漢文の返り点のように、関係代名詞や関係副詞で後戻ったりせず、頭から順にそのまま読んでいきましょう。ネイティブもそういう風に読んでいます。 全部を理解しなくても、だいたいのイメージがつかめればOKです。 ドラマや映画でも、後になって、そうか、あれはこういう意味だったのかと気づくことがありますよね。物語とはそういうものです。

Of course, he did.
無論、知っていた。

How could it be otherwise?
それを知らずにいられようか?

*otherwise = さもなければ

Scrooge and he were partners for I don’t know how many years.
スクルージと彼とは、私(語り手)にもわからないほど、長い年月の間、共同パー経営者トナーだったのだ。

Scrooge was his sole executor, his sole administrator, his sole assign, his sole residuary legatee: his sole friend and sole mourner.
スクルージはマーレイの唯一の遺言執行者であり、唯一の遺産管理人であり、唯一の資産譲受人であり、その他の財産の唯一の受遺者であり、唯一の友であり唯一の会葬者であった。

*executor = 執行者、遺言執行人、administrator = 管理者、assign = 譲受人、residuary = 残余の、legatee = 遺産受取人、mourner = 会葬者

And even Scrooge was not so dreadfully cut up by the sad event, but that he was an excellent man of business on the very day of the funeral, and solemnised it with an undoubted bargain.
しかも、そのスクルージですら、この悲しい出来事で悲嘆にくれたわけではなく、葬儀当日においても、すぐれた商売人であることを示して格安の費用で葬儀を執(と)り行ったのだ。

*dreadfully = 恐ろしく、非常に、funeral = 葬儀、(to) solemnise = solemnize = (式を)執り行う、bargain = 駆け引き、安売り

The mention of Marley’s Funeral brings me back to the point I started from.
マーレイの葬儀のことを述べたことで、私は出発点に立ち戻ることにする。

There is no doubt that Marley was dead.
マーレイが死んでいたことに疑問の余地はない。

This must be distinctly understood, or nothing wonderful can come of the story I am going to relate.
この点は明確に理解されねばならない。でないと、これから述べる物語に何の不思議もないことになってしまう。

*distinctly = はっきりと、(to) relate = 関連する、説明する

If we were not perfectly convinced that Hamlet’s Father died before the play began, there would be nothing more remarkable in his taking a stroll at night, in an Easterly wind, upon his own ramparts, than there would be in any other middle-aged gentleman rashly turning out after dark, in a breezy spot — say Saint Paul’s churchyard for instance — literally to astonish his son’s weak mind.
ハムレットの芝居が上演される前に観客がハムレットの父親は死んでいることを承知していなければ、父親が夜に東風にさそわれて城壁の上をぶらぶら歩いていても、何の驚きもないだろう。それは、誰か別の中年紳士が、気弱な自分の息子を文字通り、おどかそうと、暗くなってから微風の吹く場所で――そう、たとえば、セント・ポール教会の墓場で――軽率に姿を見せるのとたいして変わりないではないか。

*be convinced that … = …だと確信させられる、remarkable = 驚くべき、take a stroll = 散歩する、rampart = 城壁、rashly = 軽率に、turn out = 顔を出す、churchyard = 教会の庭・墓地、astonish = 驚かす

※長文ですね。コンマ “,” で区切られているので、そのまとまりごとに意味をつかむようにして、後戻りしないようにしましょう。

Scrooge never painted out Old Marley’s name. スクルージはマーレイ老人の名前を塗りつぶさなかった。

There it stood, years afterwards, above the warehouse door: Scrooge and Marley.
その後も何年間も、建物のドアの上には「スクルージ&マーレイ(商会)」と記載されていた。

*warehouse = 倉庫、店舗

The firm was known as Scrooge and Marley.
その会社はスクルージ&マレー商会として知られていた。

Sometimes people new to the business called Scrooge Scrooge, and sometimes Marley, but he answered to both names: it was all the same to him.
この商売で最近の取引相手はスクルージのことをスクルージと呼んだり、マーレイと呼んだりしたが、彼はどちらの名前にも返事をした。彼にとっては、どちらもまったく同じだったのだ。

Oh! But he was a tight-fisted hand at the grindstone, Scrooge!
おお! しかし、スクルージは大変な倹約家だった!

*tight-fisted = 固く握りしめた拳(締まり屋、ケチ)、grindstone = 回転砥石

A squeezing, wrenching, grasping, scraping, clutching, covetous old sinner!
絞りとり、ねじりとり、にぎり、こすりとり、つかみとる、強欲な罪人のような老人だった! 

*(to) squeeze = 絞りだす、(to) wrench = ねじりとる、(to) grasp = つかむ、(to) scrape = こすりとる、(to) clutch = つかむ、covetous = 強欲な、sinner = 罪人

Hard and sharp as flint, from which no steel had ever struck out generous fire; secret and self-contained and solitary as an oyster.
火打ひうち石のように硬くて鋭いのに、どんな鋼を打ちつけても気前よく火花を飛ばしてはくれなかった。秘密主義で、人づき合いの悪い、牡蠣かきのように(殻に閉じこもった)世捨て人であった。

*flint = 火打ち石、generous = 気前のよい、self-contained = 内にこもる、solitary = 世捨て人、oyster = 牡蠣かき

The cold within him froze his old features, nipped his pointed nose, shrivelled his cheek, stiffened his gait;
彼の心は冷たかったので、老いた顔をこおらせ、とがった鼻はひりひりと痛み、ほおはしぼみ、足どりもおぼつかなかった。

*(to) freeze / froze / frozen = 凍らせる、feature = 特徴、(to) nip = つかむ、こごえる、(to) shrivel = しぼむ、(to) stiffen = 固くなる、こわばる、gait = 歩き方

made his eyes red, his thin lips blue;
目を血走らせ、薄い唇は青ざめていた。

and spoke out shrewdly in his grating voice. しかも、耳障みみざわりの悪い声で話すことには抜け目がなかった。

*shrewdly = 抜け目なく、grating = 耳障みみざわりな

A frosty rime was on his head, and on his eyebrows, and his wiry chin.
頭の上にも、眉毛にも、また針金のようなあごにも凍った白いしもがついていた。

*frosty = 凍るような、霜のように白い、rime = しも、wiry = 針金のような、chin = あご

He carried his own low temperature always about him; he iced his office in the dogdays; and didn’t thaw it one degree at Christmas.
彼はいつも自分の冷たい雰囲気を身にまとっていた。真夏にも事務所は冷え冷えとしていたし、クリスマスでもそれが一度でも暖かくなることはなかった。

*dogdays = 犬の日々(夏のこと。オリオン座の猟犬たるシリウスに由来)、(to) thaw = とける、やわらげる

External heat and cold had little influence on Scrooge.
外界の暑さも寒さも、スクルージにはほとんど影響しなかった。

No warmth could warm, nor wintry weather chill him.
どんな暖気も彼を温めることはできず、冬の天気も彼を凍(こご)えさせることはできなかった。

*wintry = 冬の、(to) chill = こごえさせる

No wind that blew was bitterer than he, no falling snow was more intent upon its purpose, no pelting rain less open to entreaty.
どんなに吹く風も彼ほど厳しくはなく、降る雪もその目的に対して(彼ほど)断固たるものはなく、どんなにたたきつけるような雨でも懇願こんがんに対して(彼よりは)寛容であった。

*bitter = 厳しい、intent = 断固とした、pelting = たたきつけるような、open to …= 開かれている、受けやすい、entreaty = 懇願こんがん

Foul weather didn’t know where to have him.
悪天候も彼には歯がたたなかった。

*foul = 嫌な、(天気が)悪い

The heaviest rain, and snow, and hail, and sleet could boast of the advantage over him in only one respect.
豪雨や、雪や、あられや、みぞれは、ただ一点だけ、彼より優位であることを誇ることができた。

*hail = あられ、sleet = みぞれ、(to) boast of = 自慢する、advantage = 優位

They often “came down” handsomely; and Scrooge never did.
こうした雨や雪などはどんどん「降って来た」が、スクルージが頻繁にやってくることはなかったからだ。

*handsomely = 気前よく

Nobody ever stopped him in the street to say, with gladsome looks, “My dear Scrooge, how are you? when will you come to see me?”
通りで彼を呼びとめ、嬉しそうな顔つきで、「スクルージさん、お元気ですか? いつ私のところにおいでくださいますか?」と言う者など、誰もいなかった。

*gladsome = 喜ばしい

No beggars implored him to bestow a trifle, no children asked him what it was o’clock, no man or woman ever once in all his life inquired the way to such and such a place, of Scrooge.
物乞ものごいが彼に小銭を求めたことはなく、子供たちも彼に時間を聞いたことはなかった。男も女も、スクルージの全人生で一度だって彼に道や場所をたずねたことはなかった。

*beggar = 物乞ものごい、(to) implore = 懇願こんがんする、bestow = 与える、trifle = 少量

Even the blindmen’s dogs appeared to know him, and when they saw him coming on, would tug their owners into doorways and up courts: and then would wag their tails as though they said, “no eye at all, is better than an evil eye, dark master!”
盲導犬でさえ彼を知っているらしく、彼がやって来るのを見ると、飼い主を戸口や路地の奥へ引っ張っていった。そうして、そこで「邪悪な目を持つくらいなら目なんかないほうがましですよ、目の見えないご主人さま」とでもいうように、その尾を振ったものだった。

*blind = 目の不自由な、court = 裁判所、中庭、袋小路、(to) wag = 振る、evil = 邪悪な

But what did Scrooge care?
とはいえ、スクルージは何を気にしただろうか(何も気にしてはいない)?

It was the very thing he liked.
それこそ、彼が望んでいたことだった。

To edge his way along the crowded paths of life, warning all human sympathy to keep its distance, was what the knowing ones call “nuts” to Scrooge.
人生という雑踏を、人としての共感など離れていろと警告しながら進んでいくことが、スクルージにとっては、物知りが「肝心かなめ」と呼ぶことだった。

*(to) edge = じわじわと進む、nuts = 木の実、ナット(留めねじ)

Once upon a time — of all the good days in the year, on Christmas Eve — old Scrooge sat busy in his counting House.
昔のことだが――一年のうちのよき日々であるクリスマス・イブに──スクルージ老人は会計事務所に坐って忙しく仕事をしていた。

It was cold, bleak, biting weather: foggy withal:
寒く、風が強く、身を切るような天気で、霧もかかっていた。

*bleak = 風が強い、荒涼こうりょうとした、biting = 身を切るような、withal = with(その上、加えて)

and he could hear the people on the court outside, go wheezing up and down, beating their hands upon their breasts, and stamping their feet upon the pavement-stones to warm them.
しかも、外の建物に囲まれた路地では人々が息をきらしながら行ったり来たりして、手で胸をたたき、体を温めようと舗道の石の上で足をばたばたさせているのが聞こえてきた。

*(to) wheeze = 息をきらす、breast = 胸、(to) stamp = 足踏みする、pavement = 舗道

The city clocks had only just gone three, but it was quite dark already — it had not been light all day — and candles were flaring in the windows of the neighbouring offices, like ruddy smears upon the palpable brown air.
街の時計は三時を知らせたばかりだったが、すっかり暗くなっていた――もっとも一日中、明るくはなかった――そして、近隣のオフィスの窓の中では、ローソクが手でさわれそうな茶色っぽい空気の中で赤くにじんだように燃えていた。

*(to) flare = 燃える、neighbouring = neighboring = 近隣の、ruddy = 赤くなる、smear = 不鮮明になる、汚れる、palpable = 手でさわれそうな

The fog came pouring in at every chink and keyhole, and was so dense without, that although the court was of the narrowest the houses opposite were mere phantoms.
霧はあらゆる隙間すきまや鍵穴からも流れこんできて非常に濃くなったが、この路地はものすごく狭かったのに、道の反対側の家々はただの幻のようだった。

*chink = 隙間、phantom = 幽霊、亡霊、実在しない

To see the dingy cloud come drooping down, obscuring everything, one might have thought that Nature lived hard by, and was brewing on a large scale.
どんよりした雲が垂れ下がり、すべてを覆い隠していくのを見ていると、人は自然が近くに住み着いて、雲を大規模に発生させていると思うかもしれない。

*dingy = 薄汚い、droop = 垂れ下がる、obscure = あいまいにする、brew = 起ころうとしている

The door of Scrooge’s counting House was open that he might keep his eye upon his clerk, who in a dismal little cell beyond, a sort of tank, was copying letters.
スクルージの会計事務所のドアは、向こう側の、水槽みたいに暗くて小さな部屋で、書類の写しをこしらえている事務員に目を光らせることができるよう開け放たれていた。

*clerk = 事務員、事務官、dismal = 暗い、陰鬱な

Scrooge had a very small fire, but the clerk’s fire was so very much smaller that it looked like one coal.
スクルージ(の部屋の暖炉には)ささやかな火が燃やされていたが、事務員の(暖炉の)火は石炭一個に見えるほど小さかった。

But he couldn’t replenish it, for Scrooge kept the coal box in his own room; and so surely as the clerk came in with the shovel, the master predicted that it would be necessary for them to part.
しかし、補給することはできなかった。というのは、スクルージが石炭箱を自分の部屋に置いておいたので、事務員がスコップを手にやってくると、主人(雇用主であるスクルージ)が我々は別れる必要があるようだ(解雇するよ)などと予言したりするからだ。

*(to) replenish = 補給する、(to) predict = 予測、予言する

Wherefore the clerk put on his white comforter, and tried to warm himself at the candle; in which effort, not being a man of a strong imagination, he failed.
そのため、事務員は首に白いマフラーを巻き、ローソクで暖まろうとしていた。そうやってみたものの、想像力の強い人ではなかったので、うまくいかなかった。

*comforter = 掛け布団(ここでは暖をとるためのマフラー “comforter scarf” のこと)

“A merry Christmas, uncle! God save you!” cried a cheerful voice.
「メリークリスマス、伯父さん! 神のご加護がありますように!」と、明るい声が叫んだ。

It was the voice of Scrooge’s nephew, who came upon him so quickly that this was the first intimation he had of his approach.
スクルージのおいの声だった。彼はすばやく伯父のところにきたので、スクルージはこの声ではじめて彼が来たことに気がついた。

*nephew = おい、intimation = 暗示、通告

“Bah!” said Scrooge, “Humbug.”
「ふん!」と、スクルージは言った。「くだらん」

*bah = (軽蔑の間投詞)ふん、humbug = ばかばかしい

He had so heated himself with rapid walking in the fog and frost, this nephew of Scrooge’s, that he was all in a glow; his face was ruddy and handsome; his eyes sparkled; and his breath smoked again.
彼(スクルージのおいは霧としもの中を急ぎ足でやってきたので体が暖まり、全身がほてっていた。顔は赤く、美しかった。眼は輝き、また白い息を吐いた。

]*glow = 紅潮する、輝く、ruddy = 赤くなる、(to) sparkle = 輝く

“Christmas a humbug, uncle!” said Scrooge’s nephew. “You don’t mean that, I am sure?”.
「クリスマスがくだらないですって、伯父さん!」と、スクルージのおいは言った。「本気じゃないですよね?」

“I do,” said Scrooge.
「本気さ」とスクルージは言った。

“Merry Christmas! What right have you to be merry? What reason have you to be merry? You’re poor enough.”
「メリークリスマスだと! お前にどんな楽しむ権利があるんだ? どんな理由があって、おめでたいんだ? 貧乏してるじゃないか」

“Come then,” returned the nephew gaily. What right have you to be dismal? What reason have you to be morose? You’re rich enough.”

「それじゃ」と、おいは快活に言い返した。「伯父さんは何の権利があって陰気にしてるんですか? どんな理由で不機嫌ふきげんなんですか? お金持ちのくせに」

*gaily = 陽気に、dismal = 陰気な、morose = 不機嫌ふきげん

Scrooge having no better answer ready on the spur of the moment, said “Bah!” again; and followed it up with “Humbug.”
スクルージはとっさにうまい返しを思いつかなかったので、また「ふん!」と言い、「くだらん」と続けた。

*on the spur of the moment = とっさに

“Don’t be cross, uncle!” said the nephew.
「伯父さん、そうイライラしないで」と、おいが言った。

*cross = 十字架、怒りっぽい

“What else can I be,” returned the uncle, “when I live in such a world of fools as this? Merry Christmas! Out upon Merry Christmas!
「他に何ができる」と、伯父は言い返した、「こんな馬鹿な連中のいる世の中で暮らしているっていうのに? メリークリスマスだと! メリークリスマスが聞いてあきれる!

*out = 間違って、誤って(実にさまざまな意味を持つ多義語なので、文脈に応じて読みとるしかありませんね)

What’s Christmas Time to you but a time for paying bills without money;
お前にとってクリスマスの時期は、金もないのに払いをしなければならないときではないか。

*(to) pay = 支払う、bill = 請求書

a time for finding yourself a year older and not an hour richer;
年齢は一つ増えるが、金は増えない時期だ。

a time for balancing your books and having every item in ’em through a round dozen of months, presented dead against you?
帳簿の収支勘定をして、まる十二か月間、帳簿の全項目で損しているとわかる時期ではないか?

*(to) balance = 差引勘定をする、‘em = them、dead against = 真っ向から反対する

If I could work my will,” said Scrooge, indignantly, “every idiot who goes about with ‘Merry Christmas’ on his lips, should be boiled with his own pudding, and buried with a stake of holly through his heart. He should!”
「私が自分の思う通りにできるのであれば」と、スクルージは憤然ふんぜんとして言った、「メリークリスマス」などと言っている馬鹿どもは皆、そいつのプディングと一緒に煮こんで、心臓にヒイラギのくいで埋めてやる。そうされるべきだ!」

*indignantly = 憤然ふんぜんとして、idiot = 間抜け、pudding = プディング、ソーセージ、(to) bury = 埋める、stake = くい、holly = ヒイラギ

“Uncle!” pleaded the nephew.
「伯父さん!」と、おいが抗弁した。

*(to) plead 嘆願する、訴える、抗弁する

“Nephew!” returned the uncle, sternly, “keep Christmas in your own way, and let me keep it in mine.”
「お前は!」と、伯父は厳格に言い渡した。「お前はお前のやり方でクリスマスを祝え、私は私のやり方でやらせてもらう」

*sternly = 厳格に

“Keep it!” repeated Scrooge’s nephew. “But you don’t keep it.”
「祝うって!」と、スクルージのおいは繰り返した。「だけど、祝ってなんかいないじゃないですか」

“Let me leave it alone then,” said Scrooge. “Much good may it do you! Much good it has ever done you!”
「私のことはほっといてもらおう」とスクルージは言った。「お前にはいいことがたくさんあるだろう! これまでもたくさんいいことがあっただろう!」

“There are many things from which I might have derived good, by which I have not profited, I dare say,” returned the nephew.
「ぼくが利益を得ようとすれば得られたものがたくさんあったんですよ、あえて言うと(だがそうしなかった)」とおいが答えた。

*(to) derive = 由来する、得る、(to) profit = 利益をあげる

“Christmas among the rest.
「クリスマスは特にそうです。

But I am sure that I have always thought of Christmas Time, when it has come round — apart from the veneration due to its sacred name and origin, if anything belonging to it can be apart from that — as a good time; a kind, forgiving, charitable, pleasant time;
「だけど、ぼくはいつもクリスマスがめぐって来ると――その神聖な名前や由来による畏敬(いけい)の念とは別に――クリスマスに付属しているものが何であれ、畏敬いけいの念から切り離せるとしたら、クリスマスの時期のことは、親切で、寛容で、寛大で楽しい時期だと思ってるんです。

*veneration = 畏敬いけいの念、sacred = 聖なる、forgiving = 寛大な、charitable = 気前がいい、寛容な、pleasant = 楽しい

the only time I know of, in the long calendar of the year, when men and women seem by one consent to open their shut-up hearts, freely, and to think of people below them as if they really were fellow-passengers to the grave, and not another race of creatures bound on other journeys.
男も女も閉じていた心を自由に開き、自分たちより下の人たちのことについても、墓に入るまで同行の乗客であるかのように、そして別の旅に出かける別の種類の生物ではないと考える、長い一年のうちで、ぼくが知っている唯一の時期だと思ってるんですよ。

*fellow = 仲間、passenger = 乗客、grave = 墓、creature = 生き物、bound on a journey = 旅行中

And therefore, uncle, though it has never put a scrap of gold or silver in my pocket, I believe that it has done me good, and will do me good; and I say God bless it!”
だからね、伯父さん。ぼくのポケットに金貨や銀貨を入れてくれなくても、ぼくにとっては、これまでもよいことをしてくれたし、これからもそうだと信じてるんです。だから、神のご加護がありますようにと言ってるわけです」

*scrap of … = …のくず、(to) bless = 祝福する、感謝する、賛美する

The clerk in the tank, involuntarily applauded.
水槽(のような部屋)にいた事務員が思わず拍手した。

*involuntarily = 思わず、無意識に、applaud = 拍手する、称賛する

Becoming immediately sensible of the impropriety, he poked the fire, and extinguished the last frail spark for ever.
すぐにそれが不適切であることに気づき、彼は火を突っついて、最後に残った弱々しい火花を永久にかき消してしまった。

*immediately = すぐに、sensible of = 感じとる、…がわかる、impropriety = 不適切、(to) poke = つつく、(to) extinguish = 消す、frail = よわい、もろい

“Let me hear another sound from you!” said Scrooge, “and you’ll keep your Christmas by losing your situation.
「また音をたてたりしたら!」とスクルージは言った。「お前、クリスマスに職を失うことになるぞ。

You’re quite a powerful speaker,” he added, turning to his nephew.
お前は大した演説家だ」と、彼はおいの方を向いて、つけ加えた。

“I wonder you don’t go into Parliament.”
「議会にでも出たらどうだ」

*parliament = 議会
※文字通りの意味は、議会に出ないのが不思議だ。

“Don’t be angry, uncle. Come! Dine with us tomorrow.”
「怒らないで、伯父さん。うちに来てください! 明日、一緒に食事をしましょう」

Scrooge said that he would see him — yes, indeed he did.
スクルージは、会ってやろうと言った ── そう、実際にそうした。

He went the whole length of the expression, and said that he would see him in that extremity first.
彼はそうした言葉をすべて言ってしまってから、さらに、まず究極のところ(地獄)でお前に会おうと言った。

*expression = 表現、extremity = 極度、窮地

“But why,” cried Scrooge’s nephew.
“Why?” 「でも、なぜ?」と、スクルージのおいは叫んだ。「なぜです?」

“Why did you get married?” said Scrooge.
「お前はなぜ結婚したのだ?」と、スクルージは言った。

Because I fell in love.
「恋をしたからです」

“Because you fell in love!” growled Scrooge, as if that were the only one thing in the world more ridiculous than a merry Christmas.
「恋をしたからだと!」と、世の中にメリークリスマスより滑稽なものがあるとすれば、それがその唯一のことだと言わんばかりに、スクルージはうなった。

*(to) growl = うなる、どなる、ridiculous = 滑稽な

“Good afternoon!”
「じゃあな!」

“Nay, uncle, but you never came to see me before that happened.
「いや、伯父さん、でも、あなたはその(結婚する)前だってぼくに会いに来たことはないじゃないですか。

*nay = 否、反対

Why give it as a reason for not coming now?”
なぜ今になってそれを来ない理由にするんですか?」

“Good afternoon,” said Scrooge.
「お疲れさん」と、スクルージは言った。

*good afternoon = こんにちは。 ※話を切り上げようと何度も繰り返していますが、全部「さようなら」でも問題はないですね。

“I want nothing from you; I ask nothing of you; why cannot we be friends?”
「ぼくはあなたに何かもらおうなんて思ってませんよ。何もお願いしません。なんで仲よくできないんですかね?」

“Good afternoon,” said Scrooge.
「またな」と、スクルージは言った。

“I am sorry, with all my heart, to find you so resolute.
「あなたがそんなに頑固(がんこ)だとは、本当に悲しいですよ。

*resolute = 意志が固い、断固たる

We have never had any quarrel to which I have been a party.
ぼくたち(自分が当事者になって)喧嘩なんてしたことないでしょ。

*quarrel = 口論、party = 当事者

But I have made the trial in homage to Christmas, and I’ll keep my Christmas humour to the last.
「でも、クリスマスに敬意を表して仲よくしようとしてみたんですけど。ぼくはクリスマスを最後まで楽しいものにしておくつもりですよ。

*trial =審理、取り組み、選考会、homage = 敬意、humour = humor = おかしさ、滑稽さ、ユーモア

So A Merry Christmas, uncle!”
だから、メリークリスマス、伯父さん!」

“Good afternoon!” said Scrooge.
「じゃあな」と、スクルージは言った。

“And a happy new Year!”
「そして、新年おめでとう!」

“Good afternoon!” said Scrooge.
「またな」と、スクルージは言った。

His nephew left the room without an angry word, notwithstanding.
こういう態度を示されても、彼のおいは怒った言葉を口にせず部屋を出た。

*notwithstanding = … にもかかわらず

立ち読みはここまでです。朗読ファイルも用意してあります。Web上で聞くことも、mp3ファイルをダウンロードして聞くこともできます。下記のページからどうぞ。

英和対訳 クリスマス・キャロル + 朗読ファイル

 

 

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