スナーク号の航海 (16) - ジャック・ロンドン著

志願者の大半が少年だと思ってもらっては困る。逆に、割合でいうと少年は少数派だった。人生のあらゆる段階の人々、つまり老若男女の志願者がいた。内科医、外科医、歯科医も大挙してやってきたし、そんな専門家すべてがどんな役割でもやるし、自分の専門領域についても無償でいいと申し出てくれた。

経験のあるボーイや料理人、司厨長は言うまでもなく、同行したがった物書きや記者は引きも切らなかった。土木技師たちも航海に熱心だった。チャーミアンにとっては「女性」のお友だち志願者がたくさんいたし、ぼくの方には個人秘書志願者が殺到した。高校生や大学生たちも航海に出たがっていたし、労働者階級のあらゆる職業から志願者があったが、特に機械工、電気技師、技術者が熱心だった。ぼくは、辛気くさいオフィスで冒険の呼び声に心をゆさぶられた人々が多かったことに驚いた。さらに、年配で引退した船長たちに海に戻りたいと思っている人が多いということにも驚いた。若者たちは冒険したくてうずうずし、その数も増える一方で、いくつかの郡では学校の責任者も含まれていた。

父親たちも息子たちも航海に同行したがり、妻のいる多くの男たちも同様だった。若い女性の速記者は、こう書いてよこした、「私が必要ならすぐに返事をください。タイプライターをかかえて始発列車に乗ります」と。しかし傑作は──自分の妻に対する仕打ちときたら何をかいわんやだが……「旅行にご一緒する可能性について質問させていただくため立ち寄らせていただこうと思っています。二十四歳で、結婚していましたが離婚しました。このようなタイプの旅こそ求めていたものです」

考えてみれば平均的な男にとって、あからさまに自薦する手紙を書くのはかなりむずかしいことであるに違いない。手紙をよこした者の一人は、「これはむずかしいです」と、手紙の冒頭ではっきり語っていた。そうして自分の長所を披瀝しようとむなしく努力した後で「自分について書くのはすごくむずかしいです」と繰り返して締めくくっていた。とはいえ、自分を自画自賛する饒舌な者も一人いて、最後に、自分について書くのは非常に楽しかったと述べていた。

「でも想像してみてください。雇った給仕がエンジンを動かせて、故障したら修理できるとしたらどうでしょう。交代で舵も持てるし、大工仕事や機械工の仕事もこなせるのです。丈夫で健康だし勤勉でもあるのです。船酔いしたり皿を洗うだけで他に何もできない子供を選ぶつもりはないのでしょう?」 この種の手紙は拒絶しにかった。これを書いた人は独学で英語を覚えたそうで、米国滞在は二年にすぎず、さらに「生活費を稼ぐために同行したいのではなく、もっと学び見聞を広めたいのです」という。ぼくに手紙を書いた時点で、彼は大手のモーター製造会社の一つで設計者をしていて、海の経験も相当にあり、小型船の操作に人生をささげていた。

「申し分のない地位にあるのですが、自分としては旅行してみたい気持ちの方が強いのです」と、別の一人は書いている。「給料については、自分を見てもらって、一ドルか二ドルの価値だと思われたのであれば、それでかまいません。自分がそれにも値しなければ無給でも結構です。自分の正直さと品性に関しては、雇い主を喜んで紹介しますので、ボスに聞いてみてください。酒もたばこもやりませんが、正直に言うと、もう少し経験を積んだ上で、少し書き物をしたいと思っています」

「自分についてはまともだと保証します。他のまじめな連中は退屈だと思っています」と書いてきた男は、たしかにぼくに想像力を働かせたが、彼がぼくを退屈だと思ったのかな、どんな意味で言ったのかなと、ぼくは今でも戸惑っている。

「今より昔の方がよかった」と、経験豊富な船乗りは書いてきた。「とはいえ、それもずいぶんひどいものではあった」

次のような文章を書いてきた者には自己犠牲の意欲が感じられて痛々しかったので断るしかなかった。「僕には父と母と兄弟姉妹、仲の良い友人、実入りのいい仕事がありますが、それをすべて犠牲にしても、あなたのクルーの一人になりたいのです」

もっと受け入れがたかった別の志願者は、自分にチャンスを与えることがいかに必要かを示そうとした好みのうるさい若者で、「スクーナーや汽船など、ありきたりの船で出かけることは無理です」という。「なぜなら、ありきたりの船乗りたちと一緒に生活しなければならないからです。そういう生活は清潔というわけではないので」

「人間の感情すべての面を体験し」、さらに「料理からスタンフォード大学通学まであらゆることを行ってきた」という二十六歳の若者もいて、その手紙を書いている時点では「五万五千エーカー(約二万二千ヘクタール)」の放牧地でカウボーイ」をしているという。それとは対照的に「私には貴方様に検討していただけるような特別なものは何一つありませんが、万一にでも好印象を持たれたとしたら、少し時間をさいて返事を書こうという気になっていただけるかもしれません。ダメだとしても、自分の業界には常に仕事があります。期待はしていませんが希望はしています。お返事をお待ちしています」というのもあった。

「貴殿を知るずっと前に、私は政治経済学と歴史を融合させたが、その点で貴殿の結論の多くを具体的に推論していた」と書いてきた人がいたのだが、それ以来ずっと、その人と自分は知的に同類なのかなと頭を抱えている。

ここで、ぼくが受け取ったうちで上出来の短かい手紙の一つを紹介しておこう。「航海に関して契約した会社が翻意し、ボートやエンジンなどに通暁した者を必要とされる場合にはご一報ください」。短いものをもう一つ。「単刀直入にお聞きしますが、世界周航で給仕の仕事や船で他の仕事をする者が必要ですか。自分は十九歳で、体重百四十ポンド(約六十三キロ)、アメリカ人です」

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