この一年あまり、地球規模で想定外の事態が続いていますが、
気持ちを切らすことなく、一歩ずつ進んで、日常をとりもどしましょう。
本年もよろしくお願いいたします。
ネット連載していたアメリカの作家ジャック・ロンドンのヨットによる太平洋周航記『スナーク号の航海』を電子書籍として出版しました。
『野生の呼び声』や『白い牙』などのアラスカ物で知られるアメリカの作家ジャック・ロンドンは、『馬に乗った水夫』という伝記のタイトルが象徴しているように、北海道沖でのアザラシ猟の漁船に乗り組んだり、ヨットを建造して世界一周航海に出発するなど、生粋の海の男でもあった。本書はヨット、スナーク号による太平洋航海記の全訳(本邦初訳)である。ジャック・ロンドンが十七歳で懸賞エッセイに応募して一等になった幻の、ある意味で事実上の処女作となる『日本沖で遭遇した台風の話』も巻末に収録。
電子ブックの構成や書式の都合で割愛した原著の写真についても「立ち読み」コーナーですべて閲覧可能です。
Amazon、楽天KOBO、紀伊國屋書店 Kinnopy、Appleブックスなど主要電子書籍ストアで販売されます。
発行日は本日(11月10日)ですが、各サイトで購入可能になる時期には多少ずれがあります。
また、オンデマンド出版で紙本も購入可能となる予定です(現時点で Amazon のみです。なお、手続き上、電子書籍の発行から紙書籍の販売までは1,2週間遅くなります)。
リチャード・フォード
リチャード・フォード(1944年~)は現代アメリカの作家です。
短編作家としてエスクワイアやニューヨーカーなどの雑誌に作品を発表し、長編四部作の第二作目『インデペンデンス・デイ』でピューリッツァー賞(フィクション部門)とフォークナー賞を史上初めてダブル受賞した米文壇の重鎮でもあります。
とはいうものの、日本での人気はいまいちですね。
この言葉は2012年に発表された長編小説『カナダ』(邦訳なし)の一節です。
この小説では、のっけから「まず、両親がやった銀行強盗の話をしよう。それから、その後に起こった殺人についても」という主人公の回想からはじまり、事件後、一家の友人の世話で施設送りをまぬがれた少年のカナダでの生活が描かれます。
両親が銀行強盗をやって逮捕され、双子の姉は失踪し、家族でただ一人取り残された少年が主人公の物語です。
十五歳にして犯罪者の家族という境遇に置かれた少年の追憶と、異国の地での生活と成長、家族の絆、、、
作者がこの作品を構想してから完成までに二十年かかったそうです。作品に対する評価も高いのですが、日本ではまだ邦訳は出ていません。
ヒポクラテス
ヒポクラテス(紀元前460年~370年頃)は古代ギリシャの医師で、医学の父とも呼ばれる存在です。
医の倫理を説いた「ヒポクラテスの誓い」は医学生でなくても広く知られていますが、現代化されて世界医師会のジュネーブ宣言(1948年)にも反映されています。
看護学校で行われる戴帽式のナイチンゲール誓詞も、医師向けのピポクラテスの誓いを元にした看護師の心得になっています。
原文はラテン語で “ars longa, vita brevis” です。
この言葉は、そのまま、夏目漱石の『心』の表紙裏に朱印として押されています。
バートランド・ラッセル
イギリスの哲学者バートランド・ラッセル(1872年~1970年)の幸福論の一節です。
この種の女性というのは「金持ちの社交界の女性」です。
日本では社交界の存在は想像しにくいので、現代でいうと、芸能界で成功している女優さんやモデルさんでしょうか。
この一節は、「何が人々を不幸にするのか」の章の、そうした原因の一つとしてナルシシズムを論じたくだりで、ナルシシズムは人間にとって自然なことだが、「度がすぎると愛情を感じる能力が枯渇(こかつ)して」不幸になる、と説いています。
似た傾向は男にもあるとも述べています。
こうしたことは、ナルシシズムや恋愛に限らず、程度の差はあれ、実生活では誰にでもありがちですね。
たとえば、ほしいと熱望していたものが手に入ったとたんに興味がなくなるということは、子供のオモチャから大人のコレクションや略奪愛にいたるまで、ごく普通にあります。
虚栄心や誇大妄想なども人間には自然なものですが、ラッセルはそれが「度をこす」と純粋に楽しめなくなり、無気力と退屈を生じさせる──それが人生の唯一の目的になってしまうと内的な災いをもたらす……つまり、不幸になると述べています。
では、どうすればそうした不幸から逃れられるのでしょうか?
恐怖、ねたみ、罪の意識、自己憐憫など、意識や欲望が自分自身に集中していることが原因なので、興味の対象を外界に向けることにより、自分ではない外的なものに対する本物の客観的な興味がわいてくる──それにつれて不幸ではなくなっていく……というのですが、はたしてどうでしょうか。
よい友人、よい本、そして少し寝とぼけた良心: これが理想の生活だ
マーク・トウェイン
『トム・ソーヤの冒険』などの作品で知られるマーク・トウェイン(1835年~1910年)は、現代アメリカ文学の父ともいうべき存在です。
ウィリアム・フォークナーはマーク・トウェインを「最初の真のアメリカ人作家」と述べ、同じくアーネスト・ヘミングウェイは「アメリカの現代文学はマーク・トウェインの『ハックルベリー・フィンの冒険』にはじまる」とも述べています。両者ともノーベル文学賞を受賞したアメリカを代表する作家です。
マーク・トウェインは父親が負債を残して死亡したため、兄の新聞事業を手伝った後、印刷工やミシシッピ川を航行する蒸気船の水先人見習、水先人、南北戦争従軍、複数の新聞の記者などを経て作家になりました。
ちなみに、マーク・トウェインという筆名は、蒸気船が航行可能な水深を示す二尋(ふたひろ、「バイ・ザ・マーク、トウェイン」、約3.6m)から来ています。
ベストセラーを連発する売れっ子作家でありながら、浪費や投資の失敗、株式投機などで破産しましたが、また借金返済のため講演旅行で世界中を飛びまわって全額を返済したりと、行き当たりばったりで、ほらを吹き、ユーモアにあふれている一方で、意固地で人の悪口を言い出したら止まらないという、なんとも小さな枠には入りきれない複雑な人物です。
そういうことを背景に考えると「少し寝とぼけた良心」は腑(ふ)に落ちますね。
ちなみにマーク・トウェインと『あしながおじさん』の作者ジーン・ウェブスターとは親戚同士(姪の娘)です。