オープン・ボート、青いホテル、モンスター:スティーヴン・クレイン傑作短編集

オープン・ボート、アオイホテル、モンスター
スティーヴン・クレイン傑作短編集
明瀬和弘訳
電子書籍500円(税込):アマゾン・キンドル先行販売
(他の電子書籍販売サイトでも順次販売予定です)
紙の本(オンデマンド出版)1980円(税込)
立ち読みコーナー(準備中)
ISBN: 978-04-908086-19-9
ASIN: B0CW1MJ6GY

 米国の自然主義文学の先駆とされる作家、スティーヴン・クレイン(1871~1900)の一連の短編小説の新訳。
『誰がために鐘は鳴る』や『老人と海』などで知られるアーネスト・ヘミングウェイは二十代の若い作家志望者に助言を求められ、十六冊の必読書をメモに書いて渡しました。
そのリストにはトルストイの『戦争と平和』や『アンナ・カレーニナ』、ドフトエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』、スタンダールの『赤と黒』、エミリー・ブロンテの『嵐が丘』など、世界文学の古典がずらり並んでいましたが、そのリストのトップに記されているのが、スティーヴン・クレインの『青いホテル』と『オープン・ボート』という二つの短編でした。
クレインは二十八歳で早世したため作品の数も多くなく、英米文学の愛好家や専門家をのぞいてあまり知られていませんが、フォークナーやヘミングウェイなど後の世代の作家にも大きな影響を与えました。
『オープン・ボート』は、スペインからの独立を画策しているキューバに新聞社の通信員として取材に向かうために乗っていた船がフロリダ沖で沈没し、三十時間漂流した末に生還したというクレイン自身の実体験に基づいています。
クレインはその体験を海難事故の四日後には新聞にノンフィクションの手記として記載し、その半年後に小説『オープン・ボート』として雑誌に発表しています。
手記では状況について事実に即して簡潔に報告し、小説では、全長三メートルの手こぎボートに乗った四人の心の動きに焦点をあて、状況の説明を極力はぶき、極限状況における心理劇として再構築しています。
本書では新聞に掲載された手記と小説の両方を訳出しているので、同じ事故をめぐるノンフィクションとフィクションを読み比べることで、すぐれた作家の創作手法や意識の違いがはっきり読み取れるでしょう。
『青いホテル』はオープン・ボートとは逆に心理描写がなく、登場人物の目に見える行動のみを追うことで、東部からの旅行者の不条理な死の顛末を描いています。簡潔で乾いた文体でつづられ、ヘミングウェイの短編集に入っていてもさほど違和感がない作品。
この二作品に加えて、ワイロムヴィルという中西部の架空の町を舞台にした短編『新しい手袋』と中編『モンスター』も収録。
前者は子供の家出騒動について、子供の視点から心の動きを克明に描いた佳品で、後者では医師の家庭で起きた火災をめぐって、人間の誠実さとは何か、小さな共同体における人の噂や社会の空気、フェイクやヘイトといったものの持つ力などが描かれ、SNS全盛の二十一世紀のネット社会の縮図を見るよう。あまりに現代的で、現代にこそ通じる作品といえます。
ヘミングウェイが若き作家志望者に示した必読書十六作のリストについては、巻末の「あとがき」で具体的に紹介。

目次
はじめに
新しい手袋
スティーヴン・クレインの実体験にもとづく遭難についての手記
オープン・ボート
青いホテル
モンスター
訳者あとがき

立ち読みコーナー(準備中、しばらくお待ちください)

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